ぽめらしストーリー

ぽめらしは荒野を歩いていた。飼い主であった地蔵院圭太郎との約束を果たすため、己が脚が棒になろうとも、原住民の狩人に弓を放たれ右耳を失おうとも、歩くことを止めなかった。

昼には太陽がぽめらしの敵となった。太陽は眩しすぎるほどの光を地に当て、ぽめらしの肉体を焦がす。体から水分を奪い、脳からは思考を奪い、眩しさで視界さえも奪った。
夜には地球がぽめらしの敵となった。地球は自ら熱を発さず、大気からは熱を奪い、ぽめらしを凍えさせる。身を震えさせ、安眠を奪い、暗さで視界を作らなかった。

それでも、ぽめらしは歩き続けた。脚を引きずりゆっくりと、何も見えずにグルグルと、砂の荒野を延々と。ぽめらしは何も考えることが出来なかった。栄養が不足していたわけでもなければ、思考する知能が無かったわけでもない。何も考えられなかったのは、ここで何かを考えてしまえば絶望のるつぼに陥ってしまうことは考えなくとも理解できていた程に明確だったからだ。

そして、ぽめらしは今日もグルグルと歩き続ける。飼い主との約束を思い出すこともせず、自らの死を理解することもせず、ただグルグルと。